活動・事件紹介・弁護士コラム

証拠の確保について

2021/07/07
 パワハラ等の発言の有無が問題になる紛争では,最も重要なものは証拠の確保です。相談者の方で,「相手は自分で発言したのだから当然事実を認めるでしょう」と言われる方がいますが,事実の捉え方は立場によって異なる可能性がありますし,記憶も変容しますので,相手が真実と異なることを主張・証言することは多いです。
 
 問題は,その証拠をどう揃えるかです。自分のメモも証拠になりますという記述をみかけますが,それは,おそらくは,タイムリーかつ詳細に記載されたならば,傍証と合わせて証拠としての価値を持つことがあるという意味に過ぎず,だいぶ後になって思い出して書いたり,記載が雑駁だったりする場合は,通常は証拠としての価値は乏しいと思います(相手も,自分で後から一気に書いただけだろうなどと主張してきます。)。結局,後で問題になりそうな場合には,録音など客観的な証拠を少しずつ揃えていくなどの対策が必要です。近時はスマホのボイスレコーダーアプリなどで録音が比較的容易に可能と思います。
 
 次に,無断で録音等をしてしまってよいのかという問題についてです。例えば録音の場合,相手に「録音します」と告げてはパワハラ発言は残せないし,さりとて無断の録音は気が引けます。とはいうものの,録音しか証拠確保の手段がなく,かつ状況から問題発言が出る可能性があったという場合で,それを裁判所への証拠提出等必要最低限でしか用いないということであれば,それを証拠と用いても録音が違法となる可能性は小さいように思われます。実際にも民事訴訟等で録音が違法だとして証拠として認められなかったというケースはあまりないと思います(少なくとも私自身はそのような経験はないです)。
 
 このほか,加害者少数・被害者多数というケースで,裏付け証言をしてくれる協力者が多数いるという場合は,録音等を逐一集める必要は大きくないと思われるかもしれません。しかし,そのような場合でも,やはり実際の発言場面を収めた録音等はインパクトが大きいのと,最初は協力してくれると言っていた人も時間が経つと気が変わる可能性があるのとで,やはり,録音等の動かぬ証拠を集める意味は大きいです。
 
 問題発言は確かにあったのに証拠がないばかりに事実と認めてもらえないとの後悔をしないよう,トラブルになりそうな場合は証拠確保をしていただくことが必要で,方法に不安がある場合は早めに弁護士にご相談下さい。

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