取引先との間で,取引基本契約を締結しようと思います。インターネット等で入手できるひな形を使用すれば足りますか。
取引基本契約とは,繰り返される毎回の取引(基本契約に対して,個別契約ということもあります。)に共通する部分(例えば,注文や納品の方法,代金の計算方法,支払日,損害賠償,取引関係の解消の方法,秘密保持条項など)について予め定めておく契約です。
取引基本契約書に限らず,インターネットではさまざまな契約書のひな形が無料で入手でき,それを書き換えて利用することで事が足りるように思われるかもしれません。しかし,当然ながら取引の内容は千差万別,生じるトラブルの内容も千差万別ですので,貴社が行おうとしている取引についてもひな形どおりの取決めの内容でトラブルに対処できるかはわかりません。また,ひな形をもとに自分で書き換えようと思っても,書き換えの内容が自らの意図と合致しているか(万が一裁判になったときに,裁判所が自らの意図どおりに解釈してくれるような書き換えの内容になっているか)は,法律専門家の弁護士でないとなかなか判断はつかないと思います。
もちろん,弁護士でも,将来起こりうる全てのトラブルに備えられる完全な契約書を作ることはできません。しかし,弁護士は,貴社の取引の具体的な内容やご要望をお聞きして,予想されるトラブルを防ぐ条項を設けたり,極力誤解を招かないような表現の条項を作ることができます。
また,弁護士が取引基本契約の作成をお受けする場合,確かにある程度の費用をいただくことになります(規模や労力によりますが,多くは10万円から数十万円程度と思います。)。しかし,契約書を作成せず契約内容があいまいなままに取引を行い,そのためにトラブルが起きて訴訟ということになれば,多大な時間と労力をかけて訴訟に対応しなければなりませんから,そのための弁護士費用は契約書作成費用を上回るおそれが十分あります。
訴訟に携わっていてよく思うのは,人間は物事を自分に有利に解釈してしまう性質があるという点です。契約は,一面では双方の利害がバッティングする場面ですから,契約上のトラブルのある程度は,双方が自分に有利に物事を解釈していたが故に起きるものといえます。そうであれば,双方の認識を一致させて万が一のトラブルを避けるためにも,オーダーメイドの契約書を作成する意義は大きいと思われます。