活動・事件紹介・弁護士コラム

選択の痛みと専門家の役割

2024/09/20
 米コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授の著した『選択の科学』を興味深く読みました。洗濯の科学ではありません。選択肢が多ければ選び放題、満足度が高まると思われがちですが、多すぎると逆に選択した結果の満足度すら下げてしまう、という有名な『試食ジャム実験』など、人生で至るところに現れる選択にまつわる誤解や知見を明らかにしつつ問題提起をしてくれます。
 
 その中に米国と仏国での終末期患者の生命維持装置を外すか否かの選択を迫られた患者家族の痛みに関する講がありました。情報を伝える/伝えない、選択を家族がする/医師がする、の4つのうち、情報を伝えられた上で医師が選択をするケースが最も家族の痛みが少なかったとのこと。家族が選択をする場合、どうしようもなかった選択であっても、違う選択肢の方がよかったのではないか、と長期に渡って悶々と選択者を苛む痛みとなるようです。

 これは家族の生死という極限的な状況で、医師による助言の果たす役割についての調査結果ですが、私たち弁護士も辛い決断や選択をしなければならない場面に遭遇した依頼者や相談者の方に寄り添う場面があります。
依頼者や相談者と情報を共有しつつ、進む方向について的確な助言をする。そして選択の結果がご本人の今後の人生に少しでもプラスとなるような助言や寄り添いができる技能は一生磨き続ける必要がある業前です。

 専門家として決断や選択の満足度が少しでも高まるような助言や寄り添いを心掛けたいと再認識しました。

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