活動・事件紹介・弁護士コラム

イタイイタイ病原因企業に対する第53回立入調査を実施しました

2024/10/15
 2024年10月12日、イタイイタイ病の原因企業に対する「第53回全体立入調査」が行われ、当事務所からは小林弁護士(イタイイタイ病弁護団・発生源対策主任)、福島弁護士(イタイイタイ病弁護団・発生源対策担当)の2名が参加しました。
 
 当事務所は1968年にイタイイタイ病訴訟弁護団の事務局事務所として誕生し、以来一貫して半世紀以上、イタイイタイ病に関わってきました。
 
 被害地域住民や弁護士等は、1972年にイタイイタイ病訴訟の控訴審で全面勝訴判決を獲得した翌日、東京の原因企業本社において11時間に及ぶ交渉を行った末、「公害防止協定書」・「土壌復元に関する誓約書」・「イ病の賠償に関する誓約書」の3つの文書を獲得し、この「公害防止協定書」で認められた、地域住民と専門家による原因企業施設に対する「立入調査権」に基づいて協力科学者や弁護団とともに、これまで50年以上にわたり、調査を行い、発生源対策を継続してきました。
 
 このような住民自身の粘り強い活動により、現在、神通川のカドミウム濃度は自然界値にまで回復しています。
 
 多数の被害地域住民や専門家が岐阜県飛騨市神岡町にある原因企業施設への立入調査に臨む「全体立入調査」は、今回が53回目でした。
 
 本年は、原因企業における露天掘跡地での植栽の取組みが、報道陣に対し、初めて公開され、大きな社会的関心を集めました。住民側の参加者は、こうした植栽の現場だけでなく、例年通り、工場内にも立入を行い、企業側に熱心に質問し、自らの目で、発生源対策がきちんと行われているかを確認していました。

 調査後の質疑においては、住民側から、①原因企業側と住民側との間のコミュニケーションに関する質問や、②住民側が提案した排水中の有害金属をさらに削減するための実験に関する質問などが行われ、企業側からは前向きな回答が得られました。
 
 今回の全体立入調査も大変充実した内容でしたし、発生源対策は、さらに高い目標の実現を目指す、新たな段階へ、着実に進んでいっています。

 神通川の上流に原因企業の施設がある限り、再汚染の可能性がないとは言えません。発生源対策に関する懸案自体はまだ残っており、今後も継続して、対策がきちんと行われているかを確認していく必要があります。企業との「緊張感ある信頼関係」の中で、「下流に命ある限り、発生源対策に限りはない」のです。
 
 当事務所は今後もイタイイタイ病弁護団の事務局事務所として、発生源対策等、様々な活動に取り組んで参ります。

ページトップへ